シャーロック・ホームズの追悼 座談会
◇前編/プレイデータのこと
◆後編/いただいたご感想のこと(このページ)
◇特別編/難易度選択について
後編/いただいたご感想のこと
河野
さて、続いてはアンケートでいただいたご感想の中から、それぞれスタッフが「これは嬉しい!」というものをご紹介したいと思います。
竹内
もちろんどれも嬉しいご感想ばかりですから、選ぶのは非常に難しいのですが——
清木
「これはとても嬉しいけれど、ネタバレになってしまうからご紹介できないな」というものもありますし。あくまで一例をご紹介する形ですね。
河野
ご紹介は、プレイ中に選んでいただいた難易度を併記する形にさせていただきます。まずは、ノーマルモードでプレイされた方のものからです。
清木
傾向としては、これまであまり謎解きゲームをプレイしてこなかった方のご感想、という形になります。
ノーマルモードのご感想1
とても面白かったです。謎、世界観、ストーリー、ギミックが緻密に組み立てられており完璧なゲームでした。これ以上の完成度を誇るゲームに出会うことは生涯ないだろうとさえ思いました。特に(ネタバレ規制)という下りにはとても驚かされました。また、(ネタバレ規制)、どこをとっても矛盾のないお話でした。各謎ごとに問題文と解法を提示してくれていたことにより文量の多い謎解きにも関わらずプレイヤー全員がスムーズにお話を楽しめました。ほんとうに楽しかったです。幸せな時間をありがとうございました。
竹内
いきなりのネタバレ規制(笑)。
河野
こちらのご感想は「完璧なゲーム」とまで言っていただいて、本当に嬉しいですね。
清木
はい。できる限り丁寧に全体を組み立てているゲームですので、しっかり努力が伝わったご感想をいただけると、報われた思いです。
竹内
「矛盾のなさ」や「各謎ごとの解法のまとめ」などは、作る上での苦労は多いけれど、それほど目につかない部分ですよね。本作は、大謎のアイデアやストーリー展開にも、もちろん自信があるのですが、時間をかけて細部まで磨き上げている——高い完成度で体験全体をまとめることを、非常に大切にしています。
河野
この手の謎解きゲームとしては、非常にプレイしやすくまとまっていますので、あまり謎解きのご経験がない方にもぜひおすすめですね。
ノーマルモードのご感想2
前作に引き続きとても楽しませていただきました、素敵な体験をありがとうございます。
前作は主人と付き合い始めて最初のデートで一緒に遊び、今作はいつ起きるかハラハラな新生児の息子を抱えて解かせて頂きました。
お陰様で今作も思い出に残る作品になりました。
三作目の通知をまたLINEで受け取る時を、夫婦二人で楽しみにしております。
河野
こういった、プレイ風景が垣間見えるご感想も嬉しいです。プレイしてくださった方の人生に、少しでも寄り添えている感じがして、なんだか誇らしいです。
竹内
プレイ人数で「2人」が多かった理由のひとつが、こういった遊び方をしていただけていることにあるのかもしれませんね。
清木
イベント型の謎解きゲームより、さらにプライベートにお楽しみいただけるのが、家庭でプレイできる本作の魅力のひとつですよね。以前はよく謎解きイベントに参加していたけれど、最近はなかなか難しくなった、という方にもおすすめです。
ノーマルモードのご感想3
ジャケ買いしたのですが、まさかのクオリティでした。ちょっとまだ感想がうまく言葉にできないです。すごくよかった。ありがとうございました。
竹内
こちらは、青依青先生のイラストでご購入いただいた例ですね。本作のホームズは、とにかく格好良いですから(笑)。
河野
「ジャケ買いでも楽しめる」というご感想は嬉しいですね。
清木
本格的な謎解きゲームをカジュアルに楽しんでいただくのが、エスカローグシリーズの役割ですから、「すごくよかった」のひと言で苦労が報われますね。こちらこそ、ありがとうございました。
ノーマルモードのご感想4
謎解きゲームや3D小説が好きなため購入しました。とても楽しかったです!
最後に難易度が4つあるとは分からず、謎解きも自信はなかったのでノーマルのまま進行しましたが、個人的にちょうど良かったです。
前作のアリスはゴシックな絵柄と「暗闇」というワード、表紙?の黒色からホラーに感じてプレイ出来ませんでしたが、今回の探偵ホームズというモチーフは安心してプレイできました。
コロナでリアルの脱出ゲームなどを体験できない中でも、ボードなどのギミックを使った謎解きが出来て、とても楽しかったです!
またリアルの謎解きゲームのような時間制限がなく、ソロでもじっくり時間をかけて考えられるので「制限時間内に謎が解ききれなかった」「制限時間に焦ってあまり考えられなかった」ということがない点も、個人的に有り難かったです。
もし次回作があったら購入を検討したいと思います!
清木
アピールしたいポイントをいくつも褒めてくださっているご感想ですが、まずは「3D小説」のご説明が必要かもしれませんね。
河野
エスカローグの制作スタッフが出会うきっかけとなった、ある種の伝説的な企画ですね(笑)。そして、未完であるという、私が背負っている十字架のような企画でもあります。
竹内
ちょっと簡単にはご説明できない企画ですので、気になる方はぜひこちらをご参照ください(http://3dnovel.jp/#introduction)。
清木
ネタバレを気にしなければ、ゲーム開発者向けのカンファレンスで3D小説を紹介した時のGAME Watchさんの記事も短くまとまっていておすすめです。さて、いただいたご感想に話を戻して、やはり「コロナ禍でも安心してお楽しみいただける謎解きゲーム」というのは、本作の重要なポイントだろうと思います。加えて、制限時間がなく、自分のペースで謎解きと物語を楽しめるという点も。
河野
たとえばアプリなどの謎解きゲームで制限時間がないものは多数ありますが、謎解きにアナログな手触りの魅力があり、しっかりとした物語が付随していて、制限時間に囚われない、という要素を兼ね揃えたゲームは、なかなか珍しいのではないかと思います。
清木
そして、声を大にして言いたいのは、「アリスは怖くない!」ということです(笑)。
竹内
前作「アリスと謎とくらやみの物語」は、そのくらやみというモチーフのせいでなんだか怖いゲームだと思われがちですが、内容はまったく怖くないですよね。
河野
強いて言えば、ストーリーはホームズの方が怖いくらいですね。とはいえ原作通り、ミステリ色が強いのがホームズで、幻想的な雰囲気でプレイしていただけるのがアリスです。
竹内
ぜひ怖がらず、アリスもプレイしていただきたいです(笑)。
河野
さて、続いてハードモードでプレイしてくださった方のご感想に移りましょう。
清木
ハードモードは、あまり謎解きのご経験はないけれど少し手応えが欲しい方と、それなりに謎解きのご経験がある方が交じり合っている印象ですね。
ハードモードのご感想1
時に笑いが、時に悲鳴が上がるぐらい友人と楽しませていただきました。オールクリア後は全ての謎を解くことが出来た満足感とストーリーの壮大さやアイテムの全てを使い切った製作者の凄さに圧倒され、しばらくその満足感に浸っていました。
記憶をなくしてもう一度挑みたい作品です。素敵な謎解きをありがとうございました。
河野
圧倒できてよかったです(笑)。
清木
ダイレクトに感情を共有できるというのは、複数人でのプレイの醍醐味ですね。
竹内
イベント型の謎解きゲームと遜色のないレベルの生の体験を、ぜひお楽しみください。
河野
続いて、こちらのご感想では、「イベント型とは違う」点を評価してくださっています。
ハードモードのご感想2
前作がとても面白かったため、今作も購入しました。(ネタバレ規制)のギミックが非常に面白かったです!会場で行うタイプのリアル脱出ゲームでは味わえない、新しい体験型ゲームだと感じました!実際に捜査をしているようで、相関図が完成した瞬間には鳥肌が立ちました…。次回作も楽しみにしています!
竹内
ちなみに、「リアル脱出ゲーム」とはSCRAPさんの商標なのですが——
河野
このご感想の文脈では、会場で行う謎解きイベント全般を指しているのではないか、という印象です。「リアル脱出ゲーム」があまりに偉大でメジャーなため、ジャンル全体の名称として使用されているように思います。
清木
イベント型の謎解きゲームと同質の体験する魅力を持ちながら、ボードゲーム型だからこその魅力もある、というのが本作の特徴ですよね。
竹内
たとえば、謎と物語の繋がりの密度などですね。本作では「そこに謎がある理由」「その謎を解かなければならない理由」に加えて、すべての謎の「解答ワードの意味」も、みんな物語に繋がっていますから。
河野
ひとつひとつの要素には類似する作品があったとしても、総体では非常に独自色が強い作品にできたように思います。ですから、「新しい体験型ゲーム」だと感じていただけて嬉しいです。
竹内
ハードモードでのご感想から、もうひとつご紹介させてください。
ハードモードのご感想3
完全にジャケ買いでしたが楽しめました。
キットを折ったり切ったり書き込んだりしなくていいのがいい。
竹内
キットに対して、破壊要素がほぼないというのも、本作の特徴です。
河野
ボードゲーム型の謎解きゲームでは、しばしばカードを切ったり、なにかを書き込んだりすることが求められますが、本作はわりと内容物が綺麗なままゲームを終えていただけますよね。
清木
一部、一度プレイすると元に戻しにくいコンポーネントもありますが、プレイ済みの方のサポートがあれば、プレイ後の本作で、ご友人などに遊んでいただくことも充分に可能な構成になっていますね。キットを綺麗なまま保ちたい方も、ご安心ください。
河野
続きまして、ベリーハードモードのご感想を。
ベリーハードモードのご感想1
難易度が選択できるのが良かった。余計なヒントがなく、ひらめき部分多めで何度もぞわーとした。今年遊んだ謎解きゲームで一番良かった!謎部分もシステムも最高です!
竹内
こちらも、とてもありがたいご感想ですね。
河野
はい。そして、ベリーハードになると「余計なヒントがない」というご感想が出てきますね。
清木
もちろん余計なものは搭載していないつもりですが、たとえばノーマルモードだと、作中でかなりしっかりとヒントが出ますから。
河野
ベリーハードを選ばれた方は、普段からしっかりと謎解きゲームに触れている方が多いかと思います。その中で「今年遊んだ謎解きゲームで一番良かった」と言っていただけるのは、嬉しいですね。
ベリーハードモードのご感想2
長くシャーロキアンをやっているが、最高に面白かった。
竹内
こちらは、シャーロック・ホームズ愛好家の方からのご感想です。
河野
ご満足いただけて、安心しました。
清木
本作は謎解きに加え、「シャーロック・ホームズ」を愛する方にも強くおすすめできる作品ですね。
河野
なんといっても、あのワトスンと直接やりとりをして物語を進めるゲームですからね。
竹内
謎を解くたびにワトスンが感激して褒め称えるので、ホームズになったような気分を味わいたい方にもおすすめです(笑)。
清木
河野さんがホームズのcanon(正典)との年表的な整合性をチェックしていたことも私は知っています。シャーロキアンの方も大きな違和感なく楽しんでいただけるのではないでしょうか。
竹内
ホームズやワトスンが非常に美形という点にだけは目をつぶっていただけましたら(笑)。
ベリーハードモードのご感想3
全ての謎と答えが、一貫性をもったテーマに沿いつつ、無駄なく成立していることに感動しました!
こんなに綺麗な謎解きが作れる人がいることがすごく素敵に思われます!
清木
一貫性というのは、ぜひご注目していただきたいポイントですね。
竹内
本作は謎解きゲームですから、目の前の謎に答えを出すことで次々と物語が進んでいくのですが、その流れがしっかりとミステリ小説の文脈に組み込まれているはずです。
河野
ささやかな違和感が後に大きな手がかりになる、といった、ミステリ的な伏線も意図しています。決してホームズやミステリをフレーバーにのみ使っているわけではなく、謎と物語の繋がりにしっかりとした意味がありますので、その点もお楽しみいただけましたら幸いです。
清木
小説家・河野裕によるホームズパスティーシュを一本読みきったという読後感は確実に得られます。本作は「読者への挑戦状」のような形で犯人を推理するゲームではありませんが、きっとミステリ小説が好きな方にもご満足いただけるかと思います。
竹内
それでは最後に、本作の最高難易度——エクストリームモードでプレイされた方のご感想をご紹介しましょう。
エクストリームモードのご感想
エクストリームでも理不尽な飛躍は必要なかったし、不要な情報による騙しも無かったので、気持ちよく解くことができました。
ストーリーや状況設定も自然だったし、よくできてるなあと何度も思いました。
竹内
エクストリームは、本当に難易度が高いですよね。
河野
「謎解きが大好きな人たちに向けて、高難易度を売りにして作られたゲーム」ほどではないだろうと思います。ですが、相当謎解きに慣れていても、1、2か所は考え込んでしまうくらいの難易度ではあると思います。
清木
ただ、「とにかく難しくしてやろう」という意図で作っているわけではないんですよね。
竹内
はい。作品として自然に生まれた難易度というか、「難易度調整のためのヒントを一切載せていないモード」という感じですね。
河野
だからもしかしたら、ミステリとしてはもっとも正当なモードかもしれませんね。貴方が名探偵であれば、適度な刺激と共に快適にプレイしていただけるはずです。
竹内
他にもご紹介したいご感想は、本当にたくさんあるのですが、この記事が終わらなくなってしまいますのでこれくらいにしておきましょう(笑)。さて今回の記事は、アンケートの結果を元に、本作がどんなプレイヤーにおすすめなのかをご紹介する、というコンセプトでしたが——
清木
正直、どなたにでもおすすめできます(笑)。
河野
強いて言うなら、プレイ中に長い文章を読みますので、そのことに抵抗がなければどなたにでもおすすめ、という感じですね。謎には驚きがあり、その謎はストーリーと密接に繋がっていて、できる限り細部まで丁寧に作ったゲームです。
清木
発売前から自信があった作品なのですが、しっかりとプレイ後アンケートにも結果が出ていて、スタッフ一同さらに自信を深めていますね。
竹内
あとは、最適な難易度さえ選んでいただければ、間違いなくお楽しみいただけるはずです。
河野
その難易度選択に関しましては、別のページに、私共の考えをまとめさせていただきます。まだ本作をプレイしていない方は、そちらをお読みいただければ、ご参考になるのではないかと思います。
竹内
本作をすでにプレイしてくださった皆様は、誠にありがとうございました。ゲームはプレイされてはじめて完成するものですから、皆様のおかげで、「シャーロック・ホームズの追悼」が本当の意味で形になったと感じております。
河野
誠に、ありがとうございました!
「シャーロック・ホームズの追悼」のプレイ後アンケートに関する座談会は、これでおしまいです。
ですが前記の通り、特別編といたしまして、「難易度選択について」の記事を公開いたします。そちらも、プレイのご参考にしていただけましたら誠に幸いです。